新しい障害福祉の時代が始まる
2002年12月1日
平成15年4月から障害者福祉サ-ビスの提供と利用のあり方が大きく変わります。それは従来の行政処分としての給付型措置制度から利用者の自己決定に基づく利用契約制度への移行というものです。すなわち障害者福祉の考え方,それに資するお金の流れ,具体的サ-ビスのあり方などを,従来の障害児(者)が福祉サ-ビスの対象者としての位置づけであったものからそれらを自主的に選択し利用する主体者にという,ある意味ではコペルニックス的な大転換で,それは今や地球的規模での時代精神として広くコンセンサスを得ている,あのノ-マライゼ-ションの考え方に立脚した理念であり人間観です。そうした時代の大きな潮流のまっただ中にあって,障害の有無以前に一人ひとりの余人を持って代え難い人格を持った個性豊かな人間としての有り様を,どのように日常の中で具体的に支えるかが我々に対して今まで以上に厳しく問われる時代になります。また一方では彼らの人生を地域のなかで支えようとする地域移行の流れに対して,本人はもちろん親や施設関係者や行政関係者が持つ「本当に地域に出て安全に,安心して暮らせるだろうか?」という不安感を我々自身どのように解決できているのでしょうか。この点については成年後見制度,地域福祉権利擁護事業,第三者サ-ビス評価事業など利用者の人権擁護を中心とした各種セ-フティネット関連の事業がいろいろなレベルで立ち上がり始めてはいるものの残念ながら未だそうした不安を払拭できるまでには機能していないのが実情です。
いずれにしても「賽は投げられた」のです。彼らが多様なニ-ズを持ちながらも地域の中でもっと健やかに,安全と安心の内に生きて暮らすためには,「発達支援」・「家族支援」・「地域生活支援」という三層構造からなる視点に立った関係機関や関係者の複眼的支援サ-ビスが不可欠です。また一方では我々関係者にとって誰もオ-ルマイティな者はいないことから一個人・一職種・一機関だけではその課題は完結・完遂しないことも明白です。畢竟地域にあるさまざまな人的物的資源とのネットワ-キングが必要となりますが,我々はそれぞれの独善の中で「小さな親切,大きなお世話!」的な有り様をしながら「時代からの孤立」や「地域からの孤立」や「専門性からの孤立」などに陥ってはいないでしょうか。今こそ新たな気付きを求めての「学び」,新たな「出会い」を通しての新たな「築き」に向かうべき時ではないでしょうか。我々一人ひとりがもっともっと彼らから信頼される支援者であり,福祉文化の福音者となるために。
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